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ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ
心地よい音と共に、握りしめた稲束の重みに、しかとなにかが体中を走ります。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ
リズミカルに刈りとり、前の束と交叉させ、腰にさげている藁の束から、四、五本をサッとぬきとって、刈りとられ交叉させている束の端をくくります。そして又俯き、腰を折り、
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ
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通りかゝた村人が、声をかけます。
「精が出るな、どーや」
「おかげさまで」
「そりゃよかった。わしらも昔は、お前さんが今やっているように、手で刈ったもんや。腰は痛いわ、顔はチクチクするわ、足は棒のようになるわ。それが今じゃどうだ。機械でものゝ小一時間もかゝらず、一枚終る。楽になった。ところが、お前さんはどうしても手で刈ると云ってきかない。わしら老人が、頑固なのは分るが、若いお前さんが、頑固なのには呆れる。なーお前さん、一度機械で刈って貰えや。どんなに楽か」
「いや、ありがとう。これが嬉しくて嬉しくて」
「体が辛いやろ」
「それが又、嬉しくて嬉しくて」
「呆れた。お前さんには呆れた。体の辛いのが嬉しいと」
「ハイ」
「全部刈りとり、それから稲架をたてゝ、稲をかける。おいおい今日中に終るのか」
「終るまでやりますから、必ず終りますよ」
「お前さんの為に、今宵の中秋の名月はあるのかも知れんな」
「嬉しいです」
「あーあ、変ったお人や、若いのに勿体ない」
村人は優しく遠ざかりました。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ
深閑とした山間の狭間に、稲刈る音だけが響きます。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ
もう誰一人見る人もなく、村人の云うように、仕事が遅くなって、月だけが見守ることでしょう。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ。
第4期 第9話 完
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