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『そんなことでどうする。世界は動いているんだ。一刻と云えども、静止していない。お前のように、唯、戦争はいけない。人を殺すのはいけない。決して報復はいけない、と念佛のように、それだけを繰り返していて、なんの解決になるんだ。もっと、現実を知らなければ。もっともっと詳しく、国々の政治、経済、軍事等々、勉強したらどうだ。その国々の現実を知って、その上での解決策を考えてみろよ。
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正しいことを云えば、それで良いと云うお前のような考えは違う。一国と云うのは、どの国でもそうだ。先ず自国の安全と、繁栄を一番大事にするもんだ。個人の生活でもそうだろう。先ず自分の家庭だ。自国が危なければ、相手を叩く、そして自国の安全を守る。当り前のことだ。どうぞ、好きなように侵略して下さい、と云う馬鹿がどこに居る。無抵抗を決めこんで、なんの備えもなく、抵抗もなく、唯平和を祈って、それで解決されるようなことを考えていて、現実としてどうなるか。相手が攻めてくれば、こちらも戦う。ごくごく当り前のことだ。武器はいけない。人を殺す武器はいかなるものでもいけない、お前はすぐそう云う。それは間違っている。誰が好んで人を殺す。止むを得ない時、相手を殺さなければ、自分が殺される。だから先ず、相手を殺す。これが何故、悪なんだ。先制攻撃、これが大事なんだ。戦いの現実なんだ。うたれる前に相手を撃つ。弱点を知って、そこを撃つ戦略を考えることが、どこがいけない。われは何処のなに兵衛なにがしと相方、名を名乗り、打ち合うそんな時代じゃないんだ。戦争のお蔭での科学の進歩程、目ざましいものはない。人間は戦争の為に、あらゆることが現実的に、可能になっているんだ。小さいことは云わない。原子力の利用でも戦争のお蔭で、解決されたんだ。核戦力の保有が抑止になっている。この現実は知らないと駄目だ。平和の心が抑止になっていると考えたら、大間違いだ。核の保有が抑止となり、軍備の拡大が相手の攻撃を抑える。これしかないという現実を知らないといけない。いざとなって見ろ、無抵抗のお前など、一番初めにやっつけられてしまう。無残に死んでしまうのだ。お前はそれでいゝかもしれない。でも俺はごめんだ。真っ平ごめんだ。お前と運命をともにしたいとは毛頭考えない。どうしてもという事態になったら、先ずお前をやっつけてから相手と戦う。それ位の気持は俺にはある。自分を守る為には、身近な危ない奴から、やっつける、これは正攻法だ。会社であろうと、一国であろうと、同じことだ。それ程、自分を守り、会社を守り、国を守るということは大変なことなんだ。そこを先ず知ったらどうだ。お前のように、自分一人の信念や、祈りがすべてに通用する程、甘くはない。右の頬を打たば、左の頬をも出せ、一里行くことをしいれば共に二里を行け、それは念仏だ。それが現実を知らない者の考えなのだ。どんな闇の中でも、一寸動いただけでも殺される、この現実を知らないと駄目だ。今は空からボタン一つで壊滅させることが出来る時代なんだ。あーお前と話していてもむなしくなるだけだ。現実の厳しさを知らないお前を責めたい。第一、考えてみろ、お前の身の安全と、自由の保証は、どこから来ていると思うんだ。お前自身の心のあり方から来ていると思ったら、大間違いだ。吾が国の軍備、同盟国の安保、それがあって初めて、得られる安全なんだ。このお前と直接、関係のあるこの現実こそ、よく知った方がよい。その上で、ものを云えよ。知ったら云えない筈だ。
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お互い若かった時、お前が俺に書き送ってくれたものがある。これだ、読んでみろ。
たとひ我もろもろの国人の言および御使の言を語るとも、愛なくば鳴る鐘や鐃はちの如し。たとひわれ予言する能力あり、又すべての奥義と凡ての知識とに達し、また山を移すほどの大なる信仰ありとも、愛なくば数えるに足らず。たとひ我わが財産をことごとく施し、又わが体を焼かるる為に付すとも、愛なくば我に益なし。愛は寛容にして慈悲あり。愛は妬まず、愛は誇らず、驕らず、非礼を行わず、己の利を求めず、憤らず、人 の悪を念わず、不義を喜ばずして、真理の喜ぶところを喜び、凡そ事忍び、おゝよそ事信じ、おゝよそ事望み、おゝよそ事耐うるなり。愛は長久までも絶ゆることなし。
この云っていることのすばらしさはよく分る。しかし考えてみろ。この言葉が発せられてから何年たっている。2000年を超えているんだ。二○○○年の歳月で解決できなか
ったことが、今のこの世紀に山積みになっているということなんだ。これが現実の俺達の生だ。お前のように祈りが必ず通じるというのなら、何故この2000年の歳月が、無為
に過ぎたんだ、むなしくなる。本当にむなしくなる。それでもお前は、この愛の言葉を至上のものとして、尊ぶというのか。お前はお前だ。だが俺は俺だ』
第4期 第7話 完
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