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| 母 | 「来てくれたね。お前さんの来るのを待っていたんだ」 | |
| 娘 | 「どうしたの、なにかあったの」 | |
| 母 | 「なんにもないよ。背中を掻いでおくれな」 | イメージ拡大表示431×600(51Kb) |
| 娘 | 「孫の手があるでしょ」 | |
| 母 | 「いかん、もう孫の手も使えなくなった。どうでもいゝから早く掻いでおくれ」 | |
| 娘 | 「おかしいのよね。痒いと思うと、もう我慢が出来なくなるのよね」 | |
| 母 | 「笑ってないで早くおし」 | |
| 娘 | 「ハイ、ハイ。こゝ」 | |
| 母 | 「もうちょっと右だ、もうちょっと上、今度は下だ、もうちょっと左……」 | |
| 娘 | 「分るわ。右を掻くと左、上を掻くと次は下が痒くなるものよ」 | |
| 母 | 「なんか気持がいゝね。ほっとするよ、なんでだろう。こんなことで幸せを感じるって」 | |
| 娘 | 「足をなくした方がね、足の先が痒いと云うそうよ」 | |
| 母 | 「ほう、不思議な感覚なんだね」 | |
| 娘 | 「人間の脳ってどういう風の出来なのか、不思議だわ」 | |
| 母 | 「たしかに神経や免疫は不思議な話ばかりだね」 | |
| 娘 | 「お母さん、神経にさわるかも知れないけど、孫の手も使えなくなったの」 | |
| 母 | 「そうだ、手がまわせなくなった。もうおしまいだ」 | |
| 娘 | 「そんなことはなくてよ。今想い出したので話すわ。おこらないでね。河馬がね、あの大きな河馬が、木の株にお尻をこすりつけて、ごしごし掻いているのよ。真剣そのもの、でもその姿が可愛いったらないの」 | |
| 母 | 「わたしも河馬になれというのかい」 | |
| 娘 | 「そうじゃないの。唯、急に想い出したから話しただけ。気にしないで」 | |
| 母 | 「当然、自分で掻いていたものが、自分で掻けなくなって、子供に掻いでもらう。その子供も大きくなって、自分ではやって上げなくなって、どこかの土産に孫の手を買って来て、これで掻くと気持がいゝと、第一実によく上手に出来ていると手渡す。本人も感心する。孫の手とはよく云ったもんだ。まごまごしている内に、それもとうとう使えなくなった。こりゃおしまいだ」 | |
| 娘 | 「そんなことなくてよ」 | |
| 母 | 「そうか、まだ奥の手の河馬の手があったか」 | |
| 娘 | 「………」 | |
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2002 第3期 第26話 完 |
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