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| 娘 | 「お母さん、機嫌はどうですか」 | |
| 母 | 「人はよく機嫌を聞くけど、どうもわからないことがある」 | |
| 娘 | 「え、それはどういうことなの」 | イメージ拡大表示441×600(40Kb) |
| 母 | 「いや、キゲンは機と嫌だろう。なんで嫌なのかね。もともといやな気分を想定して、だから機嫌はどうですか、よくなりましたかと云うのかね」 | |
| 娘 | 「………」 | |
| 母 | 「機嫌に続く言葉として、機嫌を直す、機嫌を損ねる、とろくな言葉が出てこない。やはり前提に、気分が悪いに違いないというおもいがあるよ、きっと」 | |
| 娘 | 「まあまあお母さん、それ位にして、私はそんなこと考えなくてよ。たゞ素直に使っているだけ」 | |
| 母 | 「それでもお前、言葉は時代を生きているとは云え、時には疑問を持った方がいゝよ」 | |
| 娘 | 「それは私でも、この年齢になると気になるわ。おかしい使い方とおもえることがありますよ」 | |
| 母 | 「そうだろう。言葉の間違った使い方と、今わたしが云っている、初めから変な言葉だと疑問を持つのと両方あるね。機嫌を問われると、機嫌を悪くしたりしかねない」 | |
| 娘 | 「お母さん、歳なんですから、そんなことでいらいらするのはおかしいわ」 | |
| 母 | 「余計にもやもやして来たけど、まあいゝか。お前の云う通りそれ相応の歳になってるわけだ」 | |
| 娘 | 「それ、きゝわけということよ。きゝわけられる歳になっているということ」 | |
| 母 | 「その通りで御座居ます」 | |
| 娘 | 「いやだわ。そんないゝ方。でもお母さんの時代で、正しい日本語の使い方も終るのかしら」 | |
| 母 | 「わたしなんか出鱈目だよ。唯、これはなんにでも当てはまるかなと思うと、なんにでも当てはまってしまうけど、時代は動いていて、必ず変ってしまう。正確に云うと劣えて行っているようだ。駄目になっていると云いたいのだが」 | |
| 娘 | 「昔から、今の若い者はと云っていたのでしょう。その昔若者は大人になって、また今時の若い者は、と云うのでしょう。必ず悪くなっている筈よ。昔若者が大人になれば、よくなっているということはなくてよ」 | |
| 母 | 「落ちるばかりかい。情けないね。こんな云い方も気にくわないけど、先進国、後進国ね。先に亡びに向って進んでいるのが先進国、あとからついてゆくのが後進国だね。悪くなってゆく見本が、先進国の感はあるね」 | |
| 娘 | 「寂しいわ、神さまのこと忘れるからよ。人間の力を過信してしまうのは、愚かなことよ」 | |
| 母 | 「お前はその割りきり方が出来るからいゝよ」 | |
| 娘 | 「神さまへの信仰ですら、動いていると思うわ。イエス、キリストの時代とは神さまへの信仰には雲泥の差があると思います」 | |
| 母 | 「脳の発達のなせるわざかい」 | |
| 娘 | 「脳のことは分らないわ。でも願望や欲望が脳の発達から生じるものなら、やはり脳の発達の仕方が悪いの。でもそう云っても始まらないから、私はその人その人、大きく云って人間の願望の持ち方、欲望の持ち方に別れ目があると思うの」 | |
| 母 | 「なにが云いたいのかね」 | |
| 娘 | 「昔の人の願望は、御心の天におけるが如く、地にも行われんことをという一語に尽きたと思うの」 | |
| 母 | 「今は願望より欲望の時代だね」 | |
| 娘 | 「そうなの、だから質素な生活、文明の利器にあまり頼らない生活をしている、小さな国々の人達に心が向いてしまうわ」 | |
| 母 | 「それで今日は土産がないんだ」 | |
| 娘 | 「そうではなくてよ。今日はいろいろあって、お店には寄れなかったの、ごめんなさい」 | |
| 母 | 「いや冗談だよ。お前は昔から堅物で、冗談が昔から通じなくて困ったことがある」 | |
| 娘 | 「………」 | |
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2002 第3期 第22話 完 |
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