|
| 娘 | 「お母さんは日本が好き」 | |
| 母 | 「挨拶もなしだ。いきなり来たね。わたしは外国に行ったことがないので、実体験としてはなんの意見も持たないけど、日本の姿がどんどん変ってゆくのは、情けないと思っている」 | |
| 娘 | 「私も同感よ。いわゆる愛国主義者ではなくてよ。日本を他の国より、はるかに優れているとか、進んでいるとか、比較しての優越感は一切持ってなくてよ」 | イメージ拡大表示425×600(54Kb) |
| 母 | 「なんでこんなに、アメリカナイズされているんだろう。これが情けないね。 | |
| 娘 | 「情けないことばかりなのね」 | |
| 母 | 「その情けなさは、自分に帰ってくるんだから、自分も情けなくなる」 | |
| 娘 | 「それじゃつまらないわ。私達一人々々が、実にはっきりした個の上に成り立っているのと同じで、国とはいえ、長い歴史の中でそれぞれの個をもって、成り立っている筈よ。 同調したりしても、上べだけ真似たり装っても必ずそれは長続きしないわ。髪は染めても、必ず根から自分の本来のものが、顔をのぞかせるのと同じよ。自分の本来のもので生きて、それが一番自然だということは、大事な生きる要素だと思います」 | |
| 母 | 「文明を実に高く評価し、先端技術を誇りにするけど、国によって価値は様々であるべきを、知った方がいゝのにと思うね」 | |
| 娘 | 「よその国を感化しようなど、もっての外よ。その国は遅れているから、どんどん新しいものを導入させて、変えてゆこうなど、本当にぞっとしてよ」 | |
| 母 | 「わたしは知らないが、世界で武器をもってない国はあるのかね」 | |
| 娘 | 「武器にもよるけど、国としてはそれはないと思うわ。武器を生産してない国はある筈よ。武器を生産してるのは大国、強国で、弱者に売りつけているのよ」 | |
| 母 | 「お互いに学ぶことは大事だね。遅れている国は先進国に学べばいゝ。先進国は後進国に、自分らが失ったものがなにかを、学べばいゝのにと思うよ」 | |
| 娘 | 「その国にしかけた戦争のあとに入って、その国を建て直そうなど、なんの理由があって出来るのか、私には皆目分りません。その国の人々に任せたらいゝと思う。援助だけをしたらいゝの。その国にはその国の長い歴史から生れた人々の心と、やり方があるのですもの。私の家のことは私の家族に任せてほしいのと同じよ。駄目な時程時間はかゝるわ。でも自分達で考え、立ち上がらないとね。感激もないわ」 | |
| 母 | 「わたしはね、指導者や、上に立つ者は大事だと思うけど、これは経験からゆくと、指導者の風は、上をなびいてゆくだけだよ。根まで動かすことは出来ない。うんと強烈な場合は違うよ。無残にも根からやられる。でも普通は上をなびいて、いつかは通り過ぎるだけだ。大事なことは一人々々の根の深さだよ」 | |
| 娘 | 「そうね。根なし草は自分の責任ですものね。私もよく反省してよ」 | |
| 母 | 「お前は自省心が強いからね。これは若い時からだ」 | |
| 娘 | 「全く同じ経験を同時にしたとしても、なんでこんなにも人さまざまなのかと痛感してよ」 | |
| 母 | 「偉い人に聞いてみたいことは一杯あったね。でもその偉い人が右よりだったり、左よりだったり、どこかの国に迎合したり、弱腰だったり、頼れるのは自分の根かね」 | |
| 娘 | 「神さまよ」 | |
| 母 | 「今のこの世界の現状の中で、神さんの証しは何処にあるんだい」 | |
| 娘 | 「一人々々の心の内にあるの」 | |
| 母 | 「結局、そうなんだ。実力者としての力は発揮しないんだ」 | |
| 娘 | 「それでいゝのと違います。一人々々の生命を一番大事におもっているのは、神さまよ、生命の源なの」 | |
| 母 | 「実力者であるけど、力は行使しないんだ」 | |
| 娘 | 「その通りよ。力の行使は神さまらしくありません。することではなくてよ」 | |
| 母 | 「それじゃ、神さんに代って力の行使をする者が、出てくるという公算になる、そうかい」 | |
| 娘 | 「残念ながら、そうなの。それが権力者よ。そして強国よ」 | |
| 母 | 「困るね。そりゃないよと、神さんに云いたいね」 | |
| 娘 | 「お母さん、言葉を慎まないと」 | |
| 母 | 「お前、それもないよ。なんで言葉を慎まないといけないんだ」 | |
| 娘 | 「神さまはそういう存在だから」 | |
| 母 | 「黙って慎めと云うのかい」 | |
| 娘 | 「そんな命令はなくてよ。自分から慎むのよ。信じるということは自然の行為で、命令ではないの」 | |
| 母 | 「信じる。そこからすべてが始まるのか」 | |
| 娘 | 「そうだと思います。先づ、信じる。そしてそこから自分なりの小さな一歩が始まるのよ」 | |
| 母 | 「それで神さんは、自分の力を決して行使しないから、責任は一人々々に帰せられる訳だ」 | |
| 娘 | 「お母さんが云うと、一寸角が立つみたいだけど、そうだと思います」 | |
| 母 | 「少しはお前が分った気がする」 | |
| 娘 | 「すべて神さまのおぼし召しというのは、自分に対して酷のようだけど、自分が自分を律してゆく為には必要なのよ」 | |
| 母 | 「厳しいね」 | |
| 娘 | 「私はまだまだ駄目よ。でも信仰の深さには、やすらかさが伴う筈と思っています」 | |
| 母 | 「一寸疲れたね。なんとなく心地よい疲れかな」 | |
| 娘 | 「お母さんに感謝してよ」 | |
| 母 | 「おいおいまた来たね。わたしはもう寝るよ、おやすみ」 | |
| 娘 | 「………」 | |
|
2002 第3期 第21話 完 |
||