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| 娘 | 「ねぇお母さん、これはインドへ行って来た人の話で面白いのよ」 | |
| 母 | 「またおかしな話かい」 | |
| 娘 | 「面白いと、おかしいのとは微妙に違うわ。私は使い方を別けています。おかしいには僅か哀愁が入るのよ」 | イメージ拡大表示758×550(75Kb) |
| 母 | 「お前は古風だね」 | |
| 娘 | 「お母さん、インドで乞食と聖者とどう見分けるかわかります」 | |
| 母 | 「それは一目瞭然だろう」 | |
| 娘 | 「いや、わからないの。乞食は聖者の真似をしているし、聖者は乞食の風をしているというの」 | |
| 母 | 「そりゃ又どうしてだ」 | |
| 娘 | 「聖者は無一物で、ボロを身にまとっているの。乞食はやはり無一物でボロをまとっているの。顔はどちらも彫りが深く、目がするどいの」 | |
| 母 | 「見る人が見たら分るだろう。騙されるものじゃなかろう」 | |
| 娘 | 「これは私の見解よ。この話を聞いて、ほんとに面白かったの。嬉しくなる程。聖者は乞食と間違えられるようでないと、本物とは云えないと思うわ。乞食の真似をしていては駄目よ。しんから乞食そのものでないと本物とは云えません」 | |
| 母 | 「手厳しいね。それでなんで乞食の方は聖者の真似をするのだろう」 | |
| 娘 | 「それは生きられるから。インドでは聖者に対しては信仰心から施すの」 | |
| 母 | 「聞けば面白い話だね。もうどちらでもいい訳か。聖者は乞食と思われてもなんの抵抗もなく、乞食は聖者と思われて、施しを受けられる」 | |
| 娘 |
イメージ拡大表示7838×550(63Kb) 「それで思い当ってね。内の人が大原に住む画人が好きで、尋ねて行った程なの。その亡くなった大原の画人がね、普段から粗末な身なりと生活をしているんですって。友人に弟子の人がいてね。その弟子の人が云うの、外で師に出会っても、まさに乞食そのものだと思うと。すごい人だと思いました。もう亡くなって大原も寂しくなったと云っていました。その方の画くものは、まさに真に迫り、大自然であろうと、不動明であろうと、不必要なものを削ぎ落とし、真実あるのみと云っていたわ」 |
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| 母 | 「お前さんはそういう話をしている時が、一番生々しているよ。目が輝いている」 | |
| 娘 | 「私は駄目よ。なんのとり得もなくてよ。二人の姉は出来がよいのに、本当にお母さんの子かしらと思うわ」 | |
| 母 | 「お前の顔はお父さんにそっくりだよ。瓜二つと云ってもいゝ。面白い程だ、いやおかしい程だ。面白いとおかしいとお前はどちらがいゝのかい」 | |
| 娘 | 「おかしい程似ているの方がいゝわ。人にも云われてよ。家に来た人が写真を見て、よく似てますねって。私は父親を知らないだけに、そう云われて嬉しいわ。自然と泪ぐんで来るの」 | |
| 母 | 「………」 | |
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2002 第3期 第17話 完 |
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