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| 娘 | 「お母さん、気を新ためて話しましょ」 | |
| 母 | 「なにを新める必要がある。わたしゃ、なんにも悪いことはしていないよ」 | |
| 娘 | 「そういう意味でなく、一陣のさわやかな風に当って、あーいゝ風と思えるあのすがすがしさよ」 | イメージ拡大表示445×600(32Kb) |
| 母 | 「分ったようなことを云うね。でもふっと流れてくる自然の風程、心なごむものはないね。顔がほころぶ、心がなごむね。お金もいらない、タダの風なのにね。すごいもんだ」 | |
| 娘 | 「いやね。タダの風なんて」 | |
| 母 | 「お前さんは馬鹿だね。タダ程ありがたいものはないんだよ。空気がそうだろう。一陣の風だろう。雨だろう。光だろう。ありがたいものはみなたゞだ。これが天の恵みだよ」 | |
| 娘 | 「そう云われたらそうなのね」 | |
| 母 | 「人は天からのタダの恵みこそ、感謝して全身で受けとめないとね。お前こんなこと教わらないのかい。いや教わる必要もない、当り前のことだけど」 | |
| 娘 | 「分ってゝよ。唯人間はそれに人工的な恵みを加味するわ」 | |
| 母 | 「それが度がすぎると、おかしくなる」 | |
| 娘 | 「今はなんでもボタン一つそういう時代よ」 | |
| 母 | 「いやな時代になったもんだ。寒かったら、いくらでも着こんでコロコロする。暑かったら裸になる。いゝね」 | |
| 娘 | 「お母さんの時代は、女の人でも暑い時は家で裸になる人がいたわね。品がないわ」 | |
| 母 | 「馬鹿だね。裸ですませられるなら、云うことないじゃないか。タダだよ」 | |
| 娘 | 「タダ、タダと云うのは品がないわ」 | |
| 母 | 「じゃロハと云おうか。天からの恵みを全身に受けて、感謝出来る人が最高だね」 | |
| 娘 | 「未開人がいゝのね」 | |
| 母 | 「いゝ悪いではなく、人間らしい生き方をしていると思うよ。先進国というのはおかしな生き方をしているね」 | |
| 娘 | 「人間は文明の利器で、どんどん幸せになってゆくのよ」 | |
| 母 | 「わたしゃ、そろそろ終りだ。これ以上文明の利器とやらに毒されず、タダのいやロハの恵みの中で、人生を終えられるのが嬉しいよ。天からのタダの恵みだけを、たゞたゞ受けて、その恵みの中だけで終る。いゝね、なんか嬉しくなってくる」 | |
| 娘 | 「やっぱり、お母さんはお母さんの時代を終るのね」 | |
| 母 | 「わたしゃ、自分の時代なんていらないよ。タダのものしか要らないよ」 | |
| 娘 | 「………」 | |
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2002 第3期 第13話 完 |
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