第 3 期 第 10 話

今思えば、あるかなしかの うつゝの話
母と娘の対話 其の十



「お母さん……」
「一寸待った。今日はわたしに先、しゃべらせな」
「え」
「きょうはいろいろ和菓子を持って来ているんだろ」 イメージ拡大表示431×600(36Kb)
「どうして分って」
「きょうは命日だ」
「そうよ」
「黙って、唯ひたすら食べようよ」
「ひたすらとはひどいわ。普段なにも食べていないみたいよ」
「甘いものはそんなに出ないよ。和菓子はでないよ」
「お母さん、文句は禁句よ」
「厳しいね。まあ早くお出しよ。わたしは本当は大福餅が好きなんだよ。でも歯がないのがなにより残念だ。無理して食べて、喉につまらせて死んだら、お前に悪いからね。さてどれにしようか」
「そんなに嬉しそうな顔しないで。みっともないわ」
「お前は馬鹿だね。おいしいものにありついて、自然に頬がたるむ、これはすばらしいことだ」
「それじゃ、今日は私も黙るわ。ひたすら食べてね」
「ありがたや」
「………」
 
 

2002

第3期 10話 完



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