第 1 期 第 13 話
ボウジャクブジン


少年は,人が見えて家の人が話していることでボウジャクブジンと云っている言葉が気になりました。ボウジャクブジン。口の中でくり返しても全く意味は分かりません。棒を飛ばして地面にたたきつけたり突きさすようなことかな。ボウジャクブジン。
少年は辞典を引きました。辞典を引くのが好きなのです。そのぶあつさに感動するのです。家にある何冊もの日本語の辞典の中でも、一寸ボロボロになっているのが偉い気がして広辞苑をひきました。

ボウジャクブジン[傍若無人]
カタワラニヒトナキガゴトシ
人前をはばからずに勝手気ままにふるまうこと

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みんなが話していたことが、ぼんやりと分かるような気がしました。人の国に入って、空や海から建物を破壊し、山野をつぶし、民家を爆撃して人が死ぬと、それは誤爆だったと次の処を爆撃し、自分への痛みだけ知って人の痛さが分からない。このことを云っていたのか。ボウジャクブジン。

カタワラニヒトナキガゴトシ

少年はアフリカの草原の姿をおもいました。ライオンがまわりに動物がいっぱいいる中を、カタワラニヒトナキガゴトシ、のっそ、のっそと歩いている。他の動物がみな横目や頭を上げてライオンを見ているのに、強いライオンは誰も見ない。ただのっそ、のっそと歩いてゆく。これはボウジャクブジンとは違うのだろうか。どんなに廻りがあわてても騒いでも、自分だけは動かない。これはボウジャクブジンとは違うのだろうか。本当に強かったらボウジャクブジンでいいのでないか。駄目だったり、弱かったりするからボウジャクブジンにふるまってしまうのか。駄目な人がふるまうからボウジャクブジンがいけないとおもうのか。

少年はまた思いました。家の北海道犬シロと散歩する時、猫や野兎の小さいのを見るともう大騒ぎのくせに、他の家の犬とすれ違った時、少年はどうしようと胸が騒いだのにシロはぜんぜん目に入らないように前を見て通りすぎてしまったことを。あの時のシロは一体どうしたのだろう。あれはいい方のボウジャクブジンなのだろうか。
ボウジャクブジンが悪いのではなく、ヒトナキガゴトク勝手にふるまうことが悪いので、ライオンが草原をわがもの顔でのっそ、のっそと歩く時、本当はライオンは弱い動物がみな心配そうに自分を見ていることに気がつかないといけないのだ。でもこそこそ歩いたらライオンらしくないし。

少年は
「ぼくは繊細だからこのあたり気を使う」と思いました。センサイという近頃覚えた言葉を使いたく、今使えたと満足しました。人はセンサイでなくてはいけない。強い人ほどセンサイでなくては。
少年はその内に泰然自若という言葉を知るでしょう。
タイゼンジジャク、タイゼンジジャクってなんだろうと、また広辞苑をいや、日本語大辞典をひくことでしょう。

2001

第1期 第13話 完

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