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| 鶏 | 「豚君、君は哀れですね。君を思うと憐憫の情ほとばしるというか」 | イメージ拡大表示
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| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「これは聞いた話で、たしかかどうか、ヨーロッパでは君は森の中で生活しているとか」 | |
| 豚 | 「ぼくの祖先はイノシシです。誇りに思っています。」 | |
| 鶏 | 「え! イノシシさんが君の祖先ですか、似て非なるかな」 | |
| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「私の祖先は東南アジアの森の中から始まります。セキショクヤケイです。古名クタカケ」 | |
| 豚 | 「クタカケ、いい名前ですね。クタカケ、クタカケ、いーなー、ニワトリよりはるかにいい」 | |
| 鶏 | 「私はもうニワトリさんと呼ばれる方が好きですよ」 | |
| 豚 | 「駄目ですよ」 | |
| 鶏 | 「なにがですか、人間とともに生きていますよ」 | |
| 豚 | 「人間に同化してはいけない」 | |
| 鶏 | 「君こそ哀れじゃないですか」 | |
| 豚 | 「ぼくは日毎、いや昼日中の陽差しの中でも、夜の闇のなかでも、山野を駆けめぐっています」 | |
| 鶏 | 「その体で」 | |
| 牛 | 「ぼくの自慢は足と鼻です。この二つがそろえばなんでも。夢は山野を駆けめぐります」 | |
| 鶏 | 「そう云えば私も昔は飛びました」 | |
| 豚 | 「今でも飛べますよ。この間、犬に追われた時作業場の屋根を越えて、大きく飛んだではないですか」 | |
| 鶏 | 「恐ろしく夢中で、よく覚えていません」 | |
| 豚 | 「いや、驚きましたよ。けたたましい声と羽をバタバタさせて見事でしたよ」 | |
| 鶏 | 「恥ずかしい」 | |
| 豚 | 「時々は飛ばなきゃ駄目ですよ。あなたの寝床は高い木の上の筈ですよ」 | |
| 鶏 | 「私は平穏無事、日々好日が好きです」 | |
| 豚 | 「駄目ですよ。もっと反骨を持って下さい」 | |
| 鶏 | 「君は人間さんが嫌いなのですか」 | |
| 豚 | 「決して嫌いではありません。唯、同化してはいけない」 | |
| 鶏 | 「あこがれるものに同化してどこがいけないのでしょう」 | |
| 豚 | 「トンデモナイ。いまふと想い出しました。昔は動物も、雀さんでも野鳥さんでも人間につかまると、一切を拒絶し触れられただけでも死を選んだと。それこそ誉れです」 | |
| 鶏 | 「死んでなにが誉れですか」 | |
| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「人間さん達は優しく触れてくれますよ」 | |
| 豚 | 「それがなによりいけない。すぐ触れようとし、なでまわして親身に近づこうとする。トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「でも死を選ぶには当たらないと思いますよ」 | |
| 豚 | 「あなたは人間に同化しすぎた。いやまだまだ大丈夫です」 | |
| 鶏 | 「君がそんな気持ちでいるとは天にも思いませんでした」 | |
| 豚 | 「ぼくは現実は現実として、わりきろうとしています。しかし夢ははるかに駆けめぐります。自分らしく生きたい。自分を全面に出して、自由に快活に生きたい。拒絶すべきものは拒絶し、決して同化しない。死に直結するとも、あとのことはどうぞご勝手にと思います」 | |
| 鶏 | 「君にそんな烈しさがあるとは」 | |
| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「考えたら、私も哀れなのでしょうか」 | |
| 豚 | 「いやいや、あなたはそう思わないで下さい。今はニワトリさんです。でもクタカケがいい。現実としてあなたはニワトリさんですが、クタカケの心情を忘れては駄目です、と云いたいのです。生意気ですか」 | |
| 鶏 | 「いや豚君ありがとう。なにか背筋が伸びたような気がします」 | |
| 豚 | 「私達はすべて人間に近づきすぎました」 | |
| 鶏 | 「野生では生きられないということですか」 | |
| 豚 | 「いや生きられますよ。生きなければいけないと思います」 | |
| 鶏 | 「人間さんは私たちをすべて、野生から守ろうとしています」 | |
| 豚 |
「それがトンデモナイ」 |
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| 鶏 | 「人間さんは共存を考えているのと違いますか」 | |
| 豚 | 「共存は大事です。でも同化は違います」 | |
| 鶏 | 「私は、共存と同化を同一視していたのでしょうか」 | |
| 豚 | 「共存と同化とは全く違います。人間は特別な存在で、野生を野生としてはつきあえないのです。どこかで同化を求め、その中での共存を図ろうとしているのです」 | |
| 鶏 | 「人間さんは野生を野生から守ろうとし、絶滅から守ろうとしていますよ」 | |
| 豚 | 「人間らしい業ですよ。致し方ないかも知れません。しかし人間さんですら、いずれいつか未来のいつか絶滅に至ると思いませんか。それが自然の摂理と思いませんか。人間は人間らしく生きたい。しかし本来ぼくたちもぼくたちらしく生きたい」 | |
| 鶏 | 「保護されるということは」 | |
| 豚 | 「生きた屍はごめんです。可哀想ですよ」 | |
| 鶏 |
「人間は万物の霊長であると、古い書物に書いてあるそうですよ」 |
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| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「しかし事実でしょう」 | |
| 豚 | 「力の差は歴然です。だから万物の長と認めるというのは違います。強いものほど優しくないといけない。万物の霊長と認めた上での出発が、なによりの間違いですよ」 | |
| 鶏 | 「一寸難しい選択ですね。横一線の出発の真は分からないといけないということですね」 | |
| 豚 | 「横一線、気持ちがいいじゃありませんか。すべてのものが横一線。ぼくは他のものの上に立ちたいなど、毫も思ったことはありませんよ」 | |
| 鶏 | 「豚君は豚君です」 | |
| 豚 | 「ハイ、それがすべてですよ」 | |
| 鶏 | 「今、想い出しました。私の古名はクタカケとともにナガナキドリ」 | |
| 豚 | 「そうですよ。あなたの鳴き声ははりさけんばかりに輝いていますよ」 | |
| 鶏 | 「豚君、一緒に鳴きましょうか」 | |
| 豚 | 「トンデモナイ」 | |
| 鶏 | 「豚君、先程から君はトンデモナイ、トンデモナイとよく云いますが、あれは自分は豚(トン)デワナイという洒落ですか。 ひょっとしたら豚君、君の古名はトンデモナイ? 」 |
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| 豚 | 「トンデモナイ!」 | |
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2002 第1期 12話 完 |
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